座禅とだるま文化が息づく禅の古刹

興禅寺(こうぜんじ)は、通称「だるま寺」として地域内外から親しまれている曹洞宗の禅寺です。室町時代後期の永禄年間(1558年〜1570年)に開創されたと伝えられる歴史ある寺院で、かつては現在の田辺市(旧上富田町)にあった浄心寺の末寺として栄えました。江戸時代には、紀州藩主である徳川頼宣(とくがわよりのぶ)公の祈願寺となるなど、地域における信仰の中心地としての役割を担ってきました。

興禅寺が「だるま寺」と呼ばれるようになったのは、この寺が座禅の根本道場としての役割を重視していることに由来します。だるま大師は、座禅によって悟りを開いたとされる禅宗の開祖であり、その座禅を組む姿が、目標達成の縁起物である「だるま」のモデルになったとされています。そのため、興禅寺では、だるまを禅の精神や教え、そして不屈の精神の象徴として大切にしています。

寺の境内には、合格祈願や商売繁盛、病気平癒など、様々な願いが込められた大小様々なだるまが多数奉納されており、その光景は訪れる人々を圧倒します。参拝者は、だるまに願いを込めて目を入れることで、自らの目標達成への誓いを新たにし、力強い決意を固めることができます。

興禅寺では、一般の参拝者も座禅体験をすることが可能です。住職による指導のもと、静寂な環境の中で座禅を組むことで、日々の喧騒から離れ、心を見つめ直す貴重な時間を過ごすことができます。禅の教えに触れ、心を落ち着かせたい方には特におすすめです。