日本の伝統的な製鉄技術「たたら製鉄」の貴重な遺跡

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産である大板山たたら製鉄遺跡は、江戸時代のたたら製鉄の様子を今に伝える貴重な史跡です。砂鉄と木炭を原料に、鞴(ふいご)を用いて鉄を生産する「たたら」は、日本古来の製鉄技術であり、この地では萩藩の洋式造船を支える重要な役割を担いました。

遺跡がこの地に設置されたのは、周辺に豊富な森林資源があり、木炭の供給が容易であったためです。宝暦期、文化・文政期、幕末期の三度にわたり操業され、発掘調査によって高殿と呼ばれる製鉄炉などの生産遺構が確認されています。原料の砂鉄は、島根県から北前船で奈古港へ運ばれ、そこから荷駄で運ばれていました。大板山で生産された鉄は、恵美須ヶ鼻造船所で建造された「丙辰丸」の部品にも使用されました。

遺跡内には、元小屋、高殿、砂鉄掛取場、鉄池、鍛冶屋などの主要施設の遺構が良好な状態で保存されており、建物跡などが露出した形で整備されています。

平成29年3月には、遺跡の価値を紹介する展示休憩施設「大板山たたら館」が完成しました。館内では、大板山たたら製鉄遺跡や明治日本の産業革命遺産に関する展示や映像を通して、その歴史や技術を学ぶことができます。