全国でも珍しい鮭を祀る神社

大隈にある鮭神社は、その名の通り鮭を祀るという、全国的にも珍しい神社です。遠賀川を遡上する鮭を神の使いとして崇め、豊穣を祈る信仰が今に伝えられています。
伝承によれば、神護景雲3年(769年)に創建されたとされ、古くから地域の人々に信仰されてきました。社伝では、遠賀川に鮭が無事に遡上してくればその年は豊作であると伝えられ、捕れた鮭は毎年12月13日に行われる例祭「献鮭祭(けんけいさい)」で境内の鮭塚に納められます。もし鮭が捕れない年には、大根で鮭の形を作り、目に赤トウガラシを入れて表現したものを代用として奉納するという、ユニークな風習も残っています。

この神社で特筆すべきは、氏子たちが現在もなお、神の使いとして崇める鮭を決して口にしないという風習です。これは、鮭に対する深い畏敬の念を表しており、地域独特の文化として大切に受け継がれています。

境内には、樹齢700年ともいわれる夫婦クス(夫婦楠)があり、根元から二つに分かれて寄り添うように立っている姿は、夫婦円満の象徴として親しまれています。また、拝殿には木彫りの鮭や鮭の魚拓などが奉納されており、鮭と神社との深いつながりを垣間見ることができます。