先人の知恵が息づく、海沿いの石垣集落

愛南町の南西端、宇和海に面した断崖絶壁に位置する石垣の里(外泊:そとどまり)は、急峻な地形に築かれた独特の集落景観で知られています。ここは、先人たちが厳しい自然と共存するために積み上げた、強固な石垣が連なる風景が最大の魅力であり、「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財百選」にも選定されている貴重な場所です。
この集落の特長は、「だんだん畑」のように幾重にも積み上げられた石垣が、家屋や畑、そして人々の暮らしを守っている点にあります。宇和海から吹きつける強い季節風や、時に押し寄せる高波から集落を守るため、地元の人々が長い年月をかけて一つひとつ石を積み重ねてきました。その石垣の高さは、場所によっては数メートルにも及び、その雄大さと、地域住民の並々ならぬ努力と知恵を感じさせます。
石垣の里を訪れると、まるで時が止まったかのような日本の原風景に出会えます。迷路のように入り組んだ細い路地や、石垣に囲まれた小さな家々、そしてその先に広がる紺碧の宇和海のコントラストは、他では見られない独特の美しさを醸し出しています。集落内をゆっくりと散策しながら、石垣の隙間から差し込む光や、潮の香りを感じることで、この地で暮らしてきた人々の息づかいや、自然との共生の歴史を肌で感じられるでしょう。
展望台からは、集落全体を見下ろすことができ、石垣が織りなす幾何学的な模様と、美しい宇和海が一体となった壮大なパノラマビューを楽しむことができます。特に晴れた日には、青い海と空、そして灰色の石垣のコントラストが際立ち、感動的な景色が広がります。