江戸時代の農村歌舞伎を今に伝える文化財

深萱農村舞台(ふかがやのうそんぶたい)は、岐阜県加茂郡坂祝町深萱にある十二神社の拝殿で、江戸時代から明治時代にかけて、村人たちが農村歌舞伎を演じたり観覧したりして楽しんだと伝えられています。
この舞台は、拝殿と狂言舞台を兼ねた構造で、間口13.28メートル、奥行7.26メートルの桟瓦葺き切妻造りで建てられています。正面破風には手すり付きの高窓があり、庇の上部には彩色された鶴の木彫りが飾られています。
舞台機構としては、直径5.22メートルの回り舞台を中心に、せり、太夫座、花道の取り付け口、奈落などが備えられており、当時の農村芸能の様子を知る上で貴重な建物です。また、嘉永7年(1854年)の引幕や芝居関係文書約20点も保存されています。
現在の建物は明治26年(1893年)に再建されたもので、昭和47年(1972年)に岐阜県の重要有形民俗文化財に指定されました。昭和33年(1958年)に地元の青年団によって歌舞伎が演じられたのを最後に上演は行われていませんが、毎年4月の祭りでは子踊りが披露され、地域の伝統が受け継がれています。