日本最古の上水道と名水の歴史に触れる

熊本県宇土市宮庄町に位置する轟水源(とどろきすいげん)は、「肥後三名水」の一つに数えられ、「日本名水百選」にも選定されている名水です。その清らかで豊富な湧水は、古くから地域の人々の生活を支えてきました。特に注目すべきは、この轟水源から引かれた轟泉水道(とどろきせんすいどう)で、現存する上水道としては日本最古と言われています。
轟泉水道は、江戸時代の寛文3年(1663年)に、宇土藩初代藩主細川行孝によって整備されました。城下町に良質な飲料水を確保するために、約4.8kmもの距離を松橋焼の土管を使って水を引いたという、当時の土木技術の高さを物語る貴重な遺産です。現在でも一部の家庭で生活用水として利用されており、その歴史と恵みを今に伝えています。
轟水源の近くには、轟泉資料館があり、轟泉水道の歴史や仕組みについて詳しく学ぶことができます。館内では、水道の樋管として使われた宇土の名石「馬門石」の説明や、轟水源の水で作られた轟和紙の紹介など、名水に関する様々な資料が展示されています。また、宇土細川藩に関する資料も展示されており、地域の歴史と文化に触れることができます。資料館の建物は、宇土細川藩を偲ばせる土蔵白壁造りで、庭園には東屋兼用の茶室もあります。
轟水源一帯は「轟泉自然公園」として整備されており、美しい自然の中で散策を楽しむことができます。春には桜、秋には紅葉の名所としても知られ、四季折々の風景を満喫できます。また、公園内には「大太鼓収蔵館」もあり、宇土各地の雨乞いの祭りで使われていた太鼓や鉦が保存・展示されています。