地域の歴史と文化を伝える貴重な文化財

旧松喜醤油屋は、江戸時代から商いをしていた許斐(このみ)家が、幕末から明治初期にかけて建てた家屋です。明治13年(1880年)から醤油醸造を始め、当主の名にちなんで「松喜醤油」と名付けられました。昭和40年代に後継者がいなくなり醤油醸造は途絶えましたが、建物は飯塚市指定文化財として保存され、その歴史を今に伝えています。

白壁が印象的な建物は、母屋と離れからなり、当時の商家としてのたたずまいをよく残しています。母屋には、帳場や居間などがあり、生活空間と商売の場が一体となっていた様子が伺えます。特に、タンスと階段を兼ね備えた箱階段や、天井が船底をひっくり返したような形になっている船底天井など、当時の建築様式の特徴を見ることができます。離れには、母屋とは異なる趣の空間が広がっており、月見台も設けられています。これは、個人宅としては珍しいもので、当時の生活の豊かさを物語っています。

旧松喜醤油屋は、醤油醸造が盛んであった当時の様子や、商家の人々の暮らしぶりを垣間見ることができる貴重な文化財です。また、建物自体も歴史的な価値が高く、建築様式に興味がある人にとっても見ごたえのある場所です。